東京、銀座のとあるバー、時間を持て余していた俺は、ちょっと一杯のつもりのワイルド・ターキー3杯目を頼んでいた。客は俺一人、一見である俺とマスターの会話もはずまない。しかしそんな事は気にしない。
「マスター、このお店は何年目、随分雰囲気あるね」
「いえいえ、まだ5年目なんですよ、安普請なんでボロいだけですよ」
こんな店に銀座が似合う女がひょっこり一人で現れないものなのか・・・
俺の乾いた心と時間を癒しておくれ。
しかし期待に反し、20代とおもわれる若い男が一人入って来た。
さすがは銀座、いや、やや背伸びしているであろう、似合わぬトレンチコートにハットとめかしこんでいる。
都会に憧れた田舎野郎に違いない。
バックバーをひととおり眺め、さらにはメニューに丹念に目を通し
こんなにキザに決めた男はさぞやクールな酒を頼むのだろうな、俺みたいな下品な飲み方はせぬのだろう。
するとキンキンのハイトーンで
「すみましぇーん、ジンビーム、コーラ割で!」
こんな事ばかりである。
バーに外人が来るだけでケツが締まる想いがするが、そういう輩にかぎってジンビームやら「ザ・レミー=ジャックコーク」なんだ。
世間などそんなものだろう。酒は構えて飲むもんじゃない。好きなものを飲めばいい。
しかしだ、もっと旨い酒があるだろう、好きなら知りたくなるはずじゃないのか。
そんな世の中を下を向いて謙虚に生きながら、俺、やっぱり最後はアイラモルトで締めたくなってきたよ。
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